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アトピーカレッジを受けてきました

管理人はアレルギー体質で、幼少時からアトピーに悩まされ続けてきました。

とは言え、常にひどい状況が続いてきたという訳ではなく、全く湿疹の無い好調な時もありましたし、体中からリンパ液を吹き出し続けてベッドから離れられないほどひどい時もありました(その時は学校を1ヶ月くらい休みました)。

そしてここ2年ほどはどちらかというと調子が悪く、冬場でなくとも肌の乾燥がひどく、顔は日焼けしたように赤くなり、頭皮全体にかさぶたが広がっていて、手足も背中も含めて体中に湿疹が出ている状態が続いていました。
それでも当の本人は長年アトピーとともに生きてきたので今更驚くことでもなく、あまり真剣に対応せずに、たまに皮膚科に行っては薬をもらって切れたらまた行く‥というのをただ繰り返すような状況でした。

しかし久々に実家に帰った時に母親に随分と心配され、この歳になって恥ずかしい話ですが「ちゃんと治すことに向き合って欲しい」と言われまして。羽曳野市にある大阪府立呼吸器・アレルギー医療センターが実施している「アトピーカレッジ」という短期集中治療と正しい知識の教育を目的とした入院プログラムを強く勧められました。
そして思い切って入院してみた訳です。

結果から言えば入院してみて非常に良かったのですが、せっかくなので入院中どんな感じだったのか、おいくらだったのか、また何が良かったのか‥といったあたりについて書いておこうと思います。

 

初診について


まずこの病院の皮膚科を初めて受診する際には、必ず紹介状が必要です。
普段通院している皮膚科で紹介状を書いてもらえばそれで良いのですが、その際についでに初診の予約を入れてもらうことも可能なようです。
自分で予約する場合は電話予約が可能ですが、1ヶ月先まで予約で埋まっていたりもするのでなるべく早く電話した方が良いです。

初診時には片岡先生という皮膚科の主任の先生に診てもらえましたが、その際にアトピーカレッジを受けたいという相談を行いました。
アトピーカレッジは14日の入院が基本期間だそうですが、さすがに2週間まるまる会社を休むのには業務への影響も考えて抵抗があったのでその旨をお話して、会社の夏季休暇に有給1日を合わせて土日を挟んだ8日間でお願いすることができました。
アトピーカレッジは外来受診の通院で受けることも可能みたいで、このあたりは臨機応変に対応して頂けるようです。

また、この時の診察に関してもこちらの話はしっかりと聞いてもらえましたし、混雑している中でもとても丁寧に診察してもらえましたが、何より症状に対して具体的に何をどうすれば・どれくらいの期間で・どこまで良くなり・そして肌に湿疹が現れない状況まで持っていける‥ということを確信を持たれている様子に非常に心強く感じました。「ああ、これは良い先生だ」と。
覚えているだけでも過去に7軒くらいの評判の良い皮膚科に通いましたが、どこもあまり大きくは変わらず、大変な混雑ぶりなため流れ作業的であったり、説明を求めても曖昧だったり、とりあえずの対処療法的であったりする印象の域を出ませんでしたが、この初診を終えた時には「これは良くなりそうだ」という期待があり、テンションが上がりました。こういう思いを抱いたのは初めてのことでした。

ちなみに治療にあたっては血液検査で測れるTARCという値で容体を判断して、退院までにTARCを正常値まで下げるというのが1つの大きな目標だと説明されました。

最後には入院の手引きをもらい入院の予約も行いますが、この際に4人部屋と個室とどちらが良いかも聞かれました。自分の場合はノートPC持ち込んで作業しようと思っていたので個室でお願いしました。
4人部屋だと1日5000円・個室は1日7000円になりますが、短期なので個室で良いかなと。

アトピーカレッジの内容


まず入院のための荷物とともに手続きをします。
主に必要なものは以下のようなもの。

・これまで使用していた薬
・着替え(院内にコインランドリーがあります)
・タオル(シャワーの際に必要でドライヤーは借りることが可能)
・歯ブラシとかヒゲ剃りとか
・携帯電話の充電器もお忘れなく
・時間を持て余すので本とかノートPCとか
・自動販売機やコンビニがあるのでお金も

 手続きの際には最初に薬剤師の方に薬と常用しているサプリメントの提出を行います(少し後に全て返却されます)。入院時にも続けて使用可能と判断されたものはそのように指示を受けます。

 次に入院するフロア、そして部屋に案内されます。
その後は、看護師さんにシャワーやお手洗い、コインランドリーなど案内してもらえました。
そして血液検査が行われ、TARC(ターク)・総IgE・LD(LDH)・EO(好酸球)といったアレルギーに関する検査と、B型肝炎/C型肝炎/HIV/梅毒の感染症の検査が行われます。後者は看護師さんが軟膏の散布時に注意を払うための確認のためのものだそうで、費用は病院持ちとのこと。どれも検査したことが無かったので無料で行ってもらえてラッキーでした。
また、院内の眼科にて緑内障検査も行われました。ステロイドが目に入るなどによって眼圧が上がり緑内障になる事例もあるそうですが、40歳前後になると20人に1人の割り合いで緑内障になるそうで、時間をかけて徐々に視野が狭くなるため自覚しにくく、自覚する頃には手遅れとなるそうです。最終的には失明してしまう訳ですが、早期発見すればそれほど怖い病気では無いと説明されました。

自分の場合での1日のスケジュールは下記のような感じ。

・6時起床(とは言え毎日7時まで寝てました)
・7時に朝食(プレートを個室まで持ってきてもらえます)
・午前中に看護師さんによる体温と血圧のチェック
・10時にシャワー(シャワーの時間帯は人によってバラバラ)
・シャワー直後に看護師による軟膏の塗布
・12時に昼食
・講義がある日は1時間~1時間半程度の講義(全部で6つの講義)
・18時に夕食
・20時に看護師による軟膏の塗布
・21時半消灯

また、担当の医師が1人付いて頂けて、時々様子を見に来てもらえます。

コインラインドリーは年数を感じさせる印象でしたが、シャワールームは非常に綺麗でした。
食事に関しては1食260円で毎度600キロカロリー前後に調整されており、栄養士によるバランス良い内容とのことでしたが、肝心の味の方も美味しかったため「会社でも毎日食べたいなあ」などと思いました。

上記の時間以外は自由時間となるのですが、許可を取れば外出や外泊も可能です(外出によって食事がいらない場合には食事を止めてもらう必要があるので、その申請が必要になる感じです)。
最初に「土日は外出・外泊可能」と説明を受けましたが、平日に外出することも可能でした。
外泊ではない場合は、閉館時間の都合から21時までには戻る必要があります。

看護師さんはみなさんやたら親切な対応で、気さくで話し易い方も多くて驚きました。

講義内容は、アトピーについての知識、ステロイドについての知識、栄養士による食事についての知識、心理カウンセラーによるストレスへの対処法‥といった話がありました。

TARCとステロイドの塗布について


アトピーが起こる要因として、アレルギー体質またはIgE抗体を生産し易い体質と、乾燥肌という2つの体質がある旨の説明がありました。
後者は遺伝によって元々から肌の保湿を行う成分や油分が作られる量が少ないため乾燥しやすい体質ということで、そのため外からのアレルゲンを招き易いそうです。
でもってアレルゲンの侵入を排除しようと白血球が頑張り、結果Th2型リンパ球が増え、それによってTARCという物質が増えて体の中でどんどん広がっていくそうです。

アトピーは大抵は薬を塗って治療していく訳ですが、ステロイドで皮膚が綺麗になっても、体内でTARCの値が高い状態だとそれは治癒された状態とは言えず、すぐにまた皮膚が悪くなる要因になり、そうして肌が良くなったり悪化したりを繰り返してしまうということでした。

で、TARCはどうやって下げるかというと、ステロイドを塗って下げる訳ですが、目立って悪い部分だけ塗るのではなく、体内でTARCが広がっているであろう患部周辺全体にたっぷり塗るのが正しい処方になるということで驚きました。体中べたつくくらい塗ります。
また、塗る場所や量を患者に任せると塗り方に個人差が激しく出るため、どの薬をどの箇所にどれだけ塗るかをかなり具体的に指示されます。というか看護師さんが塗ってくれます。
14日のアトピーカレッジでは、最初の1週間は看護師さんが塗ってくれて、残りの1週間は看護師さんのチェックを受けながら自分で塗って正しく塗れるように導いてくれる流れになっています。

その際の塗る量はちゃんとした指標があり、チューブから指先に第一関節分だけ薬を出した量で両手分の面積を塗る‥というものです。
いやはや、今までに通った皮膚科でここまで具体的に指示があったことはありませんし(そこまで突っ込んで聞かなかった自分にも非がありますが)、何より患者によって差が出てしまうということを問題と認識しているスタンスの皮膚科には初めて出会った訳です。これは素晴らしいなあと。

そして治療の方針としては、入院時の短期間でTARCを一気に下げ、そこからは薬の強さを抑えて、あとは症状に合わせて塗る回数を減らしていきます(塗る量を減らすのでは無く、塗る量を定量化して間隔を空けていくという対処を行っているところが流石です)。「季節や生活習慣・ストレスなどによって症状が良くなったり悪くなったりするものだ」という前提で「悪くなった時でも皮膚に湿疹が出ない状態を維持する」のが最終的な到達点ということでした。
アレルギーでは「バケツの水があふれると症状が出る」「バケツの大きさが人それぞれの体質」という例えがよく用いられますが、この例えであれば、水位が上下する日常の中で水位が最も高くなってもバケツから水があふれないくらいまで水位を落として維持するようにする、ということですね。

自分の場合は入院期間が短めだったことからも「ウェットラップ」という、ぬるま湯で濡らしたガーゼで脚全体をくるむ療法も併用しました。これにより薬の浸透を良くして乾燥を抑えることが可能ということです。掻くのを防止することにもなっていると思います。

今まで通った皮膚科ではここまで具体的に量を指示されたことはなく、ステロイドに対する不安も若干はあるため、ひどい箇所にちょこっとだけ塗って「良くならないなあ」などということを今まで続けてきていた訳で、その点に感心するとともに「今までの治療は一体」などと思ってしまったり。

8日間入院してみた結果


まず入院直前の血液検査結果がこちら。

・総IgE 11631(基準値は 0~300)※アレルギー体質の値
TARC 1640(基準値は 0~450)
・EO  9.9(基準値は 0~7)
・EOS 890(基準値は 70~440)
・LD  205(基準値は 119~229)

他に食べ物などのアレルギー反応も色々と判定してもらいましたが、判定してもらったもの全てが高い値でゲンナリ。何より今までずっと食べてきていた米まで高い値が出ていてびっくりしました。ダニやホコリ、犬や猫・花粉などが高いのは過去に何度か検査してもらったことがあったので分かってはいましたが。。エビカニも幼少時から変わらず高いままで「大人になったしもう平気だろう」などと勝手に思って天丼を食べてひどい目にあったこともありましたが、こちらはそう簡単には下がらないもののようですね。。

そして退院直前の血液検査がこちら。

TARC 432(基準値は 0~450)
・EO  0.9(基準値は 0~7)
・EOS 80(基準値は 70~440)
・LD  162(基準値は 119~229)

いやはや、全て基準値内に収まっていて驚きました。
何よりも実際に、顔・頭皮・体全体が入院期間中にかなり改善され、掻くことで血が出たりかさぶたが剥がれたりするような傷のある箇所が一切無くなりました。

気になる入院費用は‥?


入院費用は約14万円でした。結構かかりましたね。。

最初に「治療内容にもよるが14日間で大体14万円くらいじゃないか」と入院時の受け付けで言われていたので、単純に「8日間なら10万切るかな」などと思っていたら14万だったので「えっ」と始めは思いましたが、会計を見て納得しました。
個室料は健康保険が効かず(そりゃそうか)それだけで5万6千円かかっていました。

内訳は以下のような感じ。

・入院料等 約5万8000円(3割負担で)
・検査 約7000円(3割負担で)
・投薬 約9500円(3割負担で)
・処 約7000円(3割負担で)
・室料 56000円(保険外)※7000円x8日間
・食事 5200円(保険外)

室料と食事費用を除いた保険の効く分が8万ちょいだった訳ですが、これに関しては後述する社会保険の高額療養費の限度額もまた8万ほどだったので(このあたりは毎月のお給料の額によって限度額も変わる)入院費用がそれ以上高かったとしても14万でストップなようですね。ということは室料が大きくのしかかる訳ですね。

8万円というお値段に関しては、こちらからもお願いして色んな物質のアレルギー判定を行ってもらったりしましたし、14日間のスケジュールで受けられる講義も全て受けさせてもらえましたし、塗り薬も多めに出してもらえていたことなど諸々含めると妥当な金額かと納得しました。

何より、2年くらい症状が悪化していたのが短期間で一気に改善した結果に加え、実用的な薬の散布の知識が得られたことからも、今回入院したのは正解だったと思います。
血液検査結果と肌の写真を見た母も大喜びでしたし。

残念ながら加入している医療保険では入院の条件でアトピーが例外扱いされていたため(前々から知ってはいましたがとても残念‥)入院費は全額払わないといけないのですが、社会保険高額療養費に対して1ヶ月の限度額が定められていて、超えた額が免除されるとか。病院に費用を支払う際に引いてもらうか、後から払い戻ししてもらうかのどちらかを選べるということでしたが、前者の場合は保健組合に書類を送って発行してもらえる認定証を病院に提出する必要があり、その認定証の期限がとても短いので書類を早めに送って届いたらすぐに入院費を払いに行く必要がありました。

 

という訳でアトピーが悪化した状態から改善せず悩んでいる方は、思い切ってアトピーカレッジを受けてみてはいかがでしょうか。
大阪市内にお住まい&お勤めの方なら、外来で受けるのも大いにアリだと思います。

以上、アトピーカレッジの体験レポートでした。