GDC2019の「BATTLEBORN」のエフェクトのメイキングの講演から、重要なトピックと英語表現の両方を取り上げてみる記事になります。
講演部分は20分ほどで、英語に慣れるのにも丁度良いと思ってピックアップしました。
BATTLEBORNはUE3で開発されていたようです。
Battleborn (video game) - Wikipedia
Introduction
講演者はBATTLEBORNを開発したGearbox SoftwareのシニアVFXアーティストのAshley Lyons氏。「Borderlands: The Pre-Sequel」にも携わっているとのこと。
Twitter: Hank Hustle🎮🖱🎨 (@FXBl4ckout) | Twitter
ArtStation: https://ashlyons.artstation.com/
pre-sequel / prequel ‥ 前日譚・前編
sequel ‥ 後日譚・後編・続編
また、BATTLEBORNの特徴は以下であると説明されています。
fast-paced ‥ ペースの速い・展開が早い
light-hearted ‥ 快活な・楽しい
FPS
stylized ‥ 様式化された・スタイライズドな
aesthetic ‥ 美的な・美学的な(アスタティック)
it incorporates mobile-like elements
‥ モバイル(ゲーム?)のような要素を組み込んでいる
講演内容のトピックは大きく3つ。
Why we decided to feature stylized effects?
なぜ我々はスタイライズドなエフェクトを特徴付けることを決めたのか?How it concepted many of our ideas?
我々の沢山のアイデアをどうやって構想したのか?How we implemented those ideas to come about with our final product?
それらアイデアを我々の最終的な製品に組み込む
メモ:【to implement】 と 【to incorporate】 と 【to integrate】 はどう違いますか? | HiNative
なぜスライライズドなエフェクトにしたのか?
2つ語られています。
It was a great way to stand out amongst other FPS games.
それが他のFPSゲームの中で突出するための方法だった。・amongst = among
・stand out ‥ 突出する・目立つ・際立つBy doing so it allowed us to create some super creative and original VFX.
そうすることで非常にクリエイティブで独創的なエフェクトを作ることができた。
キャラクターデザインの時点ですでに誇張された見た目(exaggerated look)だったそうです。そこに独自のアニメーションされたエフェクト(Animated VFX)を加えることで、アニメ的な美学(cartoon-like aesthetic)を高めて(enhance)引き立たせ(complement)、カラフルな環境も同様に引き立たせることができたとのこと。
また様々なテクニックやスタイルを試せたことも良かったそうです。
加えてAshley氏の個人的な意見として「現実に即したエフェクトはアーティストに表現の制限を与えてしまう傾向にある」とも語られています。
沢山のアイデアをどうやって構想し、どう製品に組み込んだのか?
2人のアニメーターの参加が中核になっていたようです。
●Michel Gagne氏の参加
BATTLEBORNの構想段階で、様々な映画(Spider-Man: Into the Spider-Verseも)に携わっているFXアニメーターMichel Gagne氏が加わったそうです。
About Michel Gagné
講演とは関係無いですがスパイダーバースのメイキングを貼り付けておきます。。
こちらは、Michel氏とのやり取りの説明時に登場した表現のメモです。
initial growing pains ‥ 初期の困難
out of the way ‥ 並外れた・片付いて
follow suit ‥ 先例に倣う・後に続く
go over ‥ 調査する・探査する・練習する・熟考する
初期のエフェクトのコンセプトイメージを起こしてアイデアをコンセプト化しているそうで、実際にMichel氏がゲーム中のアニメーションの1コマ1コマに手描きで起こしたものが紹介されています。
●Seung Kim氏の参加
もう1人FXアニメーターのSeung Kim氏が3万フレーム(!)を遥かに超える量の中割りのパターンを描いて、ゲームのアセットに落とし込んだそうです。
またエフェクトチームに2人のアニメーターがいる利点として、観察する機会が得られる点と「12 Principles of Animation(12のアニメーションの原則)」のいくつかを自分たちのエフェクトに応用できた点があり、結果キャラクターアニメーションを模倣したエフェクトを作ることができたそうです。そのため36フレームなら36パターンのアニメを用意したとのこと(!)。
over the course of the game development ‥ ゲーム開発の過程で
a type of basic ground impact ‥ 基本的な地面への衝撃波
fall into the groove ‥ 型にハマる・マンネリになる・慣れる
turn into ~ ‥ ~に変化する
towards the end of development ‥ 開発の終盤に向かって
up to the standard ‥ 基準に達する
go back ‥ 再び取り掛かる・立ち返る
precise ‥ きちんとした
crisp ‥ 鮮明な・きちんとした
akin to ~ ‥ ~と同種の
observe [verb] ‥ 観察する
namely ‥ すなわち・ハッキリ言えば
unnoticeable ‥ 知覚されない・目立たない
end up with ~ ‥ 結果的に~で終わる
●フレームレートガイドの作成
テクスチャスペースを最大化するためにフレームレートガイドを作成したという話がされました(詳細は話されていないので分かりませんが、記載の感じだと1枚のテクスチャに複数のアニメーションパターンを同梱していたりも?)。
最終的に3600個を超えるパーティクルエフェクトが完成したとのことです。
●スタイルガイドの作成
総勢30名のキャラクターが6つの組織に属していて、各組織とキャラクターに独自のスタイル化されたエフェクトがあり、一貫性を保つためにスタイルガイドを作成する必要があったそうです。
to keep things consistent ‥ 一貫性を保つために
consistent ‥ 辻褄の合う・一貫性のある・着実な
faction ‥ 派閥・技法の形式
cement the look ‥ ルックを固める
acquire [verb] ‥ 獲得する・習得する
we represented with electric blue and some golden yellow hues.
‥ 電撃的な青とゴールデンイエローの色合いで描写(表現)した
represent [verb] ‥ 示す・代表を務める・描画する・表現する・心に描くhue ‥ 色相・色合い・色彩・種類・型・見え方
●グレーパッキング
RGBの各チャンネルにモノクロのテクスチャを格納することをグレーパッキングと呼んでいるそうです。特定の色が必要でない限り、各テクスチャはグレーパッキング用に色味を抑えて色調統一のためにグラデーションを入れないようにしているとのこと。
最終的に90%のテクスチャをグレーパッキングしたとのこと。マテリアルインスタンスでRGBのどのチャンネルの絵柄を利用するか選べる形になっている感じでしょうか。サムネイルでどんなテクスチャが格納されているか見辛くなるため、膨大なテクスチャの大半をパックしているとなるとその点がネックになりそうですが。。
assemble [verb] ‥ 集める・組み立てる・構築する・整理する
keep at around two to three colors ‥ 2~3色に抑える
a black and white texture ‥ モノクロテクスチャ
at the end of the project ‥ プロジェクト終了時
●2Dのテクスチャを3D環境に加える
旋風の3Dエフェクトを例に、どんなテクスチャをどんな3Dモデルに適用しているか説明されています。爆発エフェクトのコンセプトアートは真横から見た絵になっていますが、色んな角度から見ても大丈夫なようにエフェクトを構成するために、Michel氏には「真下を見るようなイメージで」とオーダーしたとのこと。
strip ‥ 細長い一辺
one-to-one ‥ 1対1の・1対1に対応する
give that effect a more volume
‥ そのエフェクトによりボリューム感を与える
escape that flat billboard type look
‥ 平坦なビルボードタイプの見た目を回避する
result [verb] ‥ 生じる・帰結する
●キャラクターに合ったエフェクトを用意する
12のアニメーションの原則の適用とキャラクターアニメーションの誇張されたルックにエフェクトをマッチさせた結果、プレイヤーキャラクターの全てのエフェクトに「a sense of ownership(キャラクターを体現している感じ?)」を生んでいるとのことです。
correspond ‥ 一致する・該当する
respective 名詞(複数形) ‥ それぞれの・個別の
convey [verb] ‥ 運ぶ・伝える
ownership ‥ 所有者・責任感
bipedal ‥ 二足歩行の
shimmer ‥ チラチラと光る・揺らめく
例えば二足歩行の蛇のキャラクター「Pendles」には全てのエフェクトに蛇のテーマを、同じく鳥のキャラクター「Ernest」には卵黄と羽のテーマを与えたそうです。
a heavily implied snake theme ‥ 色濃く暗示した蛇のテーマ
egg yolk ‥ 卵黄
●エフェクトを制作する上で避けたこと
チームで「FX Soup」または「Color Vomit」と呼んでいるものを避けた(avoiding what we on the team called Effects Soup or basically Color Vomit)、具体的には画面上に過剰にエフェクトを表示させることを避けたということです。
※ soup は濃霧・分厚い雲という意味がありネガティブなニュアンスがある模様
※ vomit は嘔吐物・噴出という意味がある模様
get carried away ‥ 調子に乗る・我を忘れる
straddle a line ‥ 境界をまたぐ
abundance ‥ 大量・おびただしさ
dial back ‥ (議論などを元に)戻す
numerous critique ‥ 無数の批評
●プレイヤーが近づいた際にフェードさせる
開発終盤のポリッシュ時に「We added a fade to all of the particle systems anytime the player got close to them.(ゲーム中に全てのエフェクトをプレイヤーが近づいたらフェードさせるようにした)」そうです。
結果的にカメラの視界も良くなると思いますが、直接的にはキャラクター自体の視認性を上げるための施策ですね。
impede ‥ 妨げる
during the game ‥ ゲーム中
●最後にいくつかの助言
Ashley氏はスタイライズドなエフェクトをゲームに取り入れることを検討する際のアドバイスとして「You should ask yourself why you stylize effects in the first place and how will this decision affect your game.(そもそもなぜエフェクトをスタイライズするのか、その決定がゲームにどう影響するのか自身に問うべき)」と語っています。
そして「You can ask yourself if is the universe cohesive, (and) does everything belong.(その世界はまとまっているのかどうか、全てがあるべきところにあるかを自身に問ってはどうか)」、またコンセプト作成に移る際には新しいことへの挑戦を恐れず、自分では作れないタイプのエフェクト作成に果敢であれと言う一方で「FX Soup Look」を避けるべしといった感じにことを言われています。
それから「エフェクト自体がキャラクターのように命・振る舞い・個性を与えること」や「あなたが成し遂げられる限界に近づくこと」を最後に添えられています。
in the first place ‥ 第一に・そもそも
以上、英語のリスニングと開発における英語表現の勉強を兼ねてのご紹介でした!