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Danganronpa 英語版 クリア後の感想(ネタバレ)

英語学習のためにSteamで「ダンガンロンパ」の英語版を遊んでいましたが、ちょうどまる2ヵ月間かかってようやくクリアしました!

せっかくなのでゲームの感想と英語学習面での感想をまとめておきたいと思います。

※ネタバレがあるため未プレイの方はご注意ください

 

学習方法


こちらの記事
で大体の流れは触れていますが、具体的には以下のような感じです。

  1. Danganronpa を Windowモードでプレイ

  2. 英文が画面に表示されたら文章をチェック

  3. 少しでも分からない部分があったり新しい知見が得られたら、ゲーム中の英文をDeepL翻訳に打ち込んで意味を確認、単語はその場で「Mouse Dictionary」で調べる

  4. DeepL翻訳の英文と翻訳された和訳文をOneNoteにメモる
    要チェック部分を赤字&太字にしておく

  5. 日本語版のセリフが気になった場合はYouTubeの実況動画で確認
    そちらもOneNoteにメモる


‥これを延々と繰り返す形です。

ほとんどの文章に何かしら分からない点や新しい知見があったため、感覚的には6~7割のセリフをメモるハメになっていたかと思います。

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All sentences in this article are cited from Danganronpa: Trigger Happy Havoc
©2016 Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.

英語のセリフ、DeepLによる和訳、日本語版のセリフ(青字部分)という感じでメモっているので1つのセリフだけでもメモった文字数は多いですが、OneNoteにメモった文字数を全てカウントすると約40万4000文字になっていました。

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1つの章で5~7万文字(調査パートで8000~2万文字、学級裁判は1.5~2万文字)といった感じで、仕事以外でこんなに大量の文章をまとめたのは初めてだと思います。

プレイ時間


Steamに表示されている総プレイ時間は328時間でしたが、これはゲームを起動したまま和訳したり英単語を調べたりOneNoteを編集したりご飯を食べたりTwitterで呟いたりしていたので、水増しされた時間になっているとは思います。

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1章クリア時点で90時間かかっていたため「クリアまでに500時間くらいかかるのでは‥?」と思っていましたが、後半にいくにつれ物語の展開が早くなることと英文に読み慣れたり和訳する頻度が下がったりして4章あたりから1つの章にかかる時間が30時間ほどになっていました。

平日は業務が忙しく10~12時間くらい取られていますが、残るプライベート時間のほとんどをプレイに費やしていました。まる2ヵ月で328時間なので、1日平均5時間半になりますね。。

おかげでゲーム終盤には劇中のセリフを読むのに大分慣れてきた感じはしましたが、それでも一見して全く理解ができない(単語は簡単なのに)場面はまだまだ多いです。

例えばこちらのような。全く意味が分かりません。じっくり読んでもGoogle翻訳のような直訳での理解が精一杯ですが、一方でDeepL翻訳はちゃんと理解している様子‥

英語版:I don't need any of you to spell that out for me.
Google:私のためにそれを綴るのにあなたの誰も必要ありません。
DeepL:あなた方に言われるまでもなく、私はそれを理解しています。

日本語版:わざわざ、お前らに言われなくても、そんな事はわかっている‥


ダンガンロンパ2と V3も続けてプレイすれば、クリアした頃には今よりもさらに理解度が増しているでしょうか‥?(読める‥読めるぞ‥!という気持ちになってみたい)

英語学習として


非常に良い題材だと思いました。

文章量が多く、ほぼ全てのメッセージはゆっくり読むことができ(ノンストップ議論は不可)、ほとんどの会話はログを確認でき(クライマックス推理は不可)、現代が舞台で専門用語や固有名詞がほぼ無く、英文自体の難易度も今の自分にとって丁度良い感じでした。

何よりも物語が面白かったため、先が知りたくて最後までモチベーションが持続しました。

ゲーム中のセリフをOneNoteにメモりつつも頻出の表現も別途まとめ始めたので、そちらも少しずつ更新していけたらと思います。

 

ゲームの感想


初代ダンガンロンパ2010年PSPでリリースされたので、もう10年以上経つんですね。

自分が分かる範囲でもかなりの量のパロディが盛り込まれていますが、PC版は2016年に、PS4版は2017年に出ているため、ここ数年での実況動画が沢山YouTubeに上がっていますが‥若い配信者の人達には当然ながら元ネタの大半が分かっていない様子なのが見ていて歯がゆい感じがありますね。。w

あとゲーム中に登場する漢字でも読めない人が多いんだなというのも感じました。これはそういう時代の流れかも知れないですね。作り手としても時代に合わせる工夫がいるのかも‥

ちなみにチュンソフト1章までしか配信を認めていないようです。

PS4や5の場合、ブロードキャスト時に録画禁止区間に指定されていなければOKと配信者には捉えられている様子も伺えました。そういう意味ではチュンソフト側も古いタイトルの移植やリメイク時に禁止区間の対応をちゃんと行った方が良いのではとも思いましたが、しかしPCなど他プラットフォームでそういう対処ができない以上はPS4や5でのみ対応する意味は薄いのかも知れないですね。

それはさておき、ここまで時間をかけて遊んだゲームは久々なので、感じたことを率直に書いておこうかと思います。

●キャラ&物語

キャラクターからシチュエーションから物語の展開からラスボスまでキャッチーな要素を山ほど詰め込んだ印象でしたが、それらは興ざめするほど行き過ぎてはおらず、世界観に浸りながら最後までテンションを保ちながら楽しめました。

キャラもしっかり立っていてとても良いですね!
特に大神さくらは初めて目にした時は「どんだけフザけたデザインだ」と思いましたが、2章の時点ですっかり自分の中で良キャラ扱いになっていました。

特に黒幕のキャラが立ち過ぎていて主人公達が急速に地味に感じるほど。色々ブッ飛んでいてインパクトがすごかったですが、最後のノンストップ議論で仲間に希望を与えていく流れをゲームシステム上でプレイさせる展開はとてもアツかった。。(MOTHER2の「祈り」を思い出した)

結局、黒幕は最後まで圧倒的に主人公達を凌駕していて、自身が追い詰められて死ぬまでを想定していたであろうことから、主人公らにヒントを与えたり秘密をバラしたりといった不利な行動原理の理由にもなっていつつも最終的には「最高の死」を自身で迎える流れには「以降の作品が1作目の物語のインパクトを超えることはもうできないのでは?」と感じました。

ビジュアルや演出をコミカルに寄せているものの、ストレートに残酷な表現も多分に含まれているためか、レーティングはしっかりと CERO: D / ESRB: M(どちらも17歳以上)なんですね。下ネタも攻めてる感じはしました。。

●音楽

どれもこれも非常に良いですね!
「To Survive」はいかにも戦闘開始という感じで、聴いていてテンション上がります。
「New World Order」も演出とマッチしてるタイミングで流れた時にはゾワっとしました。

●ゲームシステム

推理モノのビジュアルノベルをベースに、学級裁判(対決パート)にミニゲームを詰め込んでアクションゲーム要素を打ち出していますが、学級裁判でハイスコアを取るメリット(= メダルを稼ぐメリット)もゲームオーバーのデメリットもあまり感じられないため、有利に進めるためのアビリティを通信簿イベント(恋愛パート)でゲットするモチベーションも低く(アビリティゲットのために章を繰り返すこと自体がビジュアルノベルと相性も悪い?)、恋愛パートのためにメダルを集めるモチベーションも低く、恋愛パートは各キャラとの会話を最後まで進めてもキャラのバックボーンがをあまり得られず‥。システムとしてと、それぞれがおまけ要素の域を出ない感じがしたのは若干残念です。

ベースはビジュアルノベルなので、むしろそれくらいが良いのかも知れません。

リアクショントークも結局全て拾わないと進行しないためゲーム面での意味合いはほとんど無いのではと思いましたが、単調なプレイ進行に能動的な要素を加えることでプレイ体験的には若干の起伏を持たせる意味はあるのかなと。。

とは言え、セリフが飛び交う中で矛盾を打ち抜く「ノンストップ議論」はゲームとマッチしていてとても良かったです。恐らく日本語版だと優しめだと思いますが、英語版ではアップアップな分、手応えも十分でした。苗木君の「That’s wrong!(それは違うよ!)」も良い味出してますね!

一方で「閃きアナグラム(文字当て)」「マシンガントークバトル(音ゲー)」は長い学級裁判パートの箸休め的な要素であるとは思いますが、ゲームとしては退屈なものに感じられました。。

「クライマックス推理」は絵を当てはめるだけのシンプルなものではありますが、これが思いのほか楽しくて自分でも驚きました。最後に犯人が浮かび上がる演出も良いですね!

●体験版

遊んでませんが、死ぬキャラが本編とは違っているそうですね‥!

確かに推理モノだと体験版でのネタバレは手痛いですよね。本編で分かり切ってることをもう一度なぞることになるので。とは言っても英断ですね。すごい。。

●一番好きなシーン

最初のお仕置き「千本ノック」で絶望するみんなの顔に紛れてモノクマも絶望しているところが何度見ても笑えてすごく好き。。

英語版と日本語版の違い


どういった違いがあったかについて軽く触れておきたいと思います。

●固有名詞

キャラ名は「ジェノサイド翔」が「Genocide Jack(日本語版と同じく男と匂わせる名前になっている)」になっている以外はそのままだったので、日本人視点ではとてもありがたかったです。

ちなみに「希望ヶ峰学園」は「Hope’s Peak Academy」で「超高校級の絶望」は「The Ultimate Despire」です。

●画像内の文字

証拠品のラベルや「クライマックス推理」のコミック調の擬音など、画像に描き込まれた日本語も全て英語に置き換わっていますが、しっかり世界観に馴染んだデザインになっているように感じました。

●英訳

英文がどれだけ自然かはまだ自分には全く分かりません。

ただ、少なくともDeepLに翻訳かけてみた感じでは全体的にかなり近い意味に寄せるよう丁寧に翻訳されているのではと思いました。

それでも、日本の漫画・アニメネタや日本語表現ならではの掛け合い部分は翻訳者も苦しそうだなあという感じはしました。例えば苗木君が学級裁判でセレスティアルを「キミ」と呼んだ時のやり取りはこちら‥

日本語版:嫌ですわ‥キミだなんて‥そんな教授みたいな口ぶり‥

英語版:Listen to you, trying to take charge. As if you're my private instructor...
DeepL:あなたの話を聞いて、責任を取ろうとする。まるで私の個人的なインストラクターのように...。


なんとなくですが、大変さが伝わってきます。。

●日本語の表現の多様性

日本語の表現の振れ幅の広さをあらためて感じました。

英語は表現力に乏しいという意味では決してないですし、英語版でもキャラの個性に応じたセリフの傾向は英語初心者の自分でもある程度は感じられました。例えば‥

Mondo ・ Aoi ・ Hiro
「you = ya」「dunno = don't know」のような省略文字が多い
 チャラい感じ?

 Celestia
「I'm = I am」「can't = can not」のように省略しない
 堅い感じ?

Toko
「Th-The」のようにどもり気味の表現が多く含まれている


‥といったように。

もちろん実際には今の自分のレベルでは分からないだけで、単語や表現のチョイスによってカジュアル・フォーマル度合いや、表現の古さ・新しさの度合いに幅を持たせ、キャラごとに様々な個性を与える工夫がなされているのだろうと想像します。

しかし日本語は名前の呼び方ひとつ取っても「苗木君」「苗木クン」「苗木っち」「苗木」「苗木誠殿」「お主」とそれぞれ個性があり、それだけでもセリフを吐いたキャラが判別できます。「オマエラ」なら、それだけでモノクマのセリフと分かりますし、漢字・平仮名・カタカナの使い分けでニュアンスも変わる。

加えて「です・ます」「だ・である」調の違いや「~なんだよ」「~なのよ」といった性別違いの表現をベースとしつつ、「~だべ」「~ですわ」「~ですぞ」「~だぁ?」「~ですぅ」「~ではないか」「~っしょ」のような語尾だけでキャラが判別できるほどの個性化が行えることからも「教科書的な文章からの崩れる振れ幅」が非常に広いため、逆に言えば日本語を学習する人にとっては漫画やアニメのセリフは難易度が高すぎるのではと想像してゾっとしました。。

また、例えばこちらは十神のセリフですが‥

日本語:ありがたく聞いておいた方がいいぞ‥

英語版:I suggest you pay attention.
DeepL:注目してみてはいかがでしょうか。


十神の尊大な感じが英文では十分に発揮されていないように感じます。

ただ、日本語の表現を直訳的に翻訳するのは恐らく正解ではなくて、それは現地の人にとっては回りくどくて不自然なものになったりするのだろうなと想像しますし、そのセリフを喋るキャラクターの性格や喋り方によって「全く同じ文章でも幅のある受け取られ方をするのが英語なのかな?」とか、そういうことをアレコレと想像したりしました。

●DeepL翻訳との完全一致

ちなみに全くの余談になりますが、DeepLで膨大な量の和訳を行った中で、終盤に1度だけDeepLの翻訳結果が日本語訳と完全一致した箇所がありました。

それがこちら、Bio Lab でKyokoの”無駄話”に付き合った時のセリフです。

英語:She let out a small laugh as she said it.
DeepL:そう言って、彼女は小さく笑った。
日本語:そう言って、彼女は小さく笑った。


些細なことではありますが、ちょっと感動しました。

 

という訳で、一旦これでDanganronpaはプレイ終了です!