ゲームエフェクトデザイナーのブログ | A Real-Time VFX Artist's Blog

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CEDEC2019 SPARK GEARのセッション感想

CEDEC2019で、ミドルウェアのエフェクトエディタ「SPARK GEAR(スパークギア)」のセッションを受けた際の感想です。

セッションの構成はこのような感じ。

・前半 スパークギアの採用事例として「ラストクラウディア」のメイキング
・後半 スパークギアの新機能の紹介

ラストクラウディアの事例


株式会社アイディス
による自社パブリッシュ&開発のモバイル向けタイトルで、リリース4ヵ月で70万ユーザー突破しているとのこと。

絵的な特徴としては、王道RPGでドット絵キャラ+3D背景+2Dイラスト+3Dエフェクト+ムービーが組み合わされているということです。

最初にアートディレクターである岩崎氏により本作の概要について話され、次にVFXディレクションされている和泉氏により具体的なエフェクトの解説が行われました。

大まかには「スキル」「超必殺技」「ガチャ演出」「その他」についてそれぞれこだわったポイントとスパークギアでどう実現したかが取り上げられていました。

演出はテンポ良く派手に展開していきますし、画面内の情報量も多いですね。

話されていた中で印象的だったのは下記2点。

・ユーザーを飽きさせないために常に画面上のどこかを動かしたかった
・本作ではテクスチャをほとんど新規で作り起さなかった

特に後者については、既存の社内ライブラリの活用+スパークギアのテクスチャ生成機能を活用したとのこと。

アセットのライブラリ活用はコストダウンだけでなく製品のクオリティ統一ができる側面などもありメリットが色々とあるかと思うのですが、一方で沢山の機種に対応しないといけない中でアセット管理やレギュレーションをどうされているのかも知りたいなと思いました。

講演中に取り上げられたエフェクトはどれもクオリティが高く、2Dイラストとエフェクトを多層構造で演出されていたり、SpineによるイラストのアニメーションとスパークギアのSpineへのアタッチ機能を活用した演出など見所も多かったので、実際のエフェクトメイキングの内容についてはぜひタイムシフトで視聴いただけると良いかと思いました。

SPARK GEARの新機能


株式会社SPARKの岡村氏・広本氏によりスパークギアの新機能の紹介がありました。

中でも特筆すべきはノードベースのテクスチャエディタとノードベースのメッシュエディタの2つでしょうか。

エフェクトアーティストにとって、エフェクトを再生しながらテクスチャやメッシュの編集をリアルタイムでプレビューに反映させながら作業できるというのは理想の環境なんですよね。

例えばHoudini Engineを使ってメッシュをエンジン上で編集できるとしても、エンジン上で自由にノードを組める訳では無く、あらかじめ編集しそうな部分をHoudiniでパラメータに出しておいて出力する必要があったり、他スタッフの要望に応じてHDA作成者が保守しないといけなかったり、あとはライセンス数の問題があったりと超えるべきハードルも色々あるかと思います。

それがエフェクトエディタ上で直接行える(しかもエフェクトアセット向けに限定されている分シンプルで習得しやすそう)となると、ノードベースでのテクスチャやメッシュ作成に手を出してノードベースの作業に馴染んでいく人がグっと増えるのではと思いました。

気になるのはそうして作成したデータの扱いですが、作成したメッシュはFBXで出力可能ということです。テクスチャも恐らく可能なのでしょう。そのように別アセットとして出力せずにエフェクトで使用した場合は、そのエフェクトデータに内包される形になるようです。

利便性が増す分、大量のワンオフのアセットを生んだり、個々のエフェクトデータの容量を増大させる懸念もありますが、それはアセット管理と運用側で吸収するべき問題ですね。ただ、スパークギアのエディタ内のライブラリとスパークギア外のエンジン上のアセットライブラリと色々と管理場所が増えて複雑になったりするんでしょうか?そのあたり全く分かってないので実際の開発タイトルで一度使ってみたい。

UE4での使用について

それからブースでお話を軽く伺いましたが、UE4での採用案件もすでに10件ほどあるというお話だったかと思います。特にNiagara正式リリース後に日本らしいファンタジックでモーショングラフィックスに近いエフェクト表現を行いたいとなった場合に、Cascadeでできなかったことがカバーできる分アーティストに求められるハードルも上がりそうな懸念があり、UE4でのスパークギアの導入も増えていくのではないかと思いました。

一方でUE4で採用したとして気になる部分がいくつかあります。

1.スパークギアのエフェクトがレンダリングされるタイミング

軽く伺った際にはポストプロセスの直前ということでしたが、最後のポスプロ前だとするとUE4でのDOFの影響を受けさせることができないのかなと。または、もしかしたら描画タイミングをUE4標準の半透明マテリアル同様にDOF前か後かを指定できるかも知れないですね。そうするとタイミングが固定なのか、固定だとしもアセット単位で指定できるのか、またはインゲームとカットシーンで動的に切り替えたりが可能なのかも気になります。

2.UE4のマテリアルの活用面

UE4で自由にマテリアルを制作して表現する部分は切り捨てることになるのか、またはスパークギア内にマテリアルをパーティクルで利用できるタイプのエミッターがあるのか気になります。 ⇒ 今後専用のシェーダエディタをスパークギアに追加予定だそうなので、対応される範囲内で自由に組めるようになるのだと思います。

3.CascadeNiagaraのエフェクトとの共存

恐らくですがそれぞれ混在させるのは使用者の自由なのかなと思います。ただ気になるのはUE4標準のエフェクトとスパークギアのエフェクトは描画タイミングが同じ場合にちゃんとエフェクト同士でZソートされて描かれるのかという点です。

4.縮小バッファ

1や3と似たような話で、結局どう描画されるのか次第なのでしょうけれど、半透明はキャラや背景でも扱われたりしますが、それら半透明の描画とスパークギアで作成したエフェクトデータの描画は同様に扱われるのか、別になるなら半透明を低解像度で描画したい場合に可能なのか、なんならGPU負荷に応じて動的に変えたい場合に可能なのかとかそのあたりが気になります。

5.UE4のバージョンアップへの対応

これはスパークギア関係無く全てのミドルウェアに言えることでしょうけれど、UE4本体のバージョンアップに対応して都度リリースされていくかと思います。その際にどうしてもラグがあるかと思うので、そのあたりも念頭に置く必要があるかも知れません。

兎にも角にも、どんどん新機能が盛り込まれていく様子に純粋にすごいなと思います。
先にも書きましたが一度実際の開発で使ってみたい!