ゲームエフェクトデザイナーのブログ | A Real-Time VFX Artist's Blog

About Making Materials on UE, Making Tools with C#, etc

「VR ZONE SHINJUKU 極限度胸試しハネチャリ」講演メモ

Unreal Fest 2017 横浜のセッション
「VR ZONE SHINJUKU 極限度胸試しハネチャリ」の講演内容のメモ。

バンダイとヒストリアとマーザアニメーションプラネットの4名の方
現在、VR ZONE SHINJUKUでのみプレイ可能

第一章
『製品の概要と企画立案』

VRを使って筐体も使って空を飛ぶ体験をさせたい
筐体は浮くような稼働になっている VRと同期
ペダルを漕ぐと羽が動いて空を飛べる ゴール(天空城)を目指す
4人同時プレイ 他のプレイヤーが見える
細い足場を進んでスタート>岩石地帯>突風 狭い岩場>洞窟エリア 難易度あがる>
光が溢れ解放感 滝 倒壊する柱>天空城 滑走路に着地するとゴール
みんなで遊んでいる感覚 インカムで声掛けが可能
デザインとして緩急 安心させてハラハラさせるのを繰り返す流れ
絶叫して遊んで欲しい 夏休み最大180分待ち
人気IPを使ったコンテンツを作るのが得意だがノンIPでチャレンジして成功している

空を自由に飛んでみたいというニーズは多くの人が潜在的に持っているニーズであると仮説を立て
稼働筐体+VRの組み合わせで体験

操縦を1つ間違えたら墜落するかもという身の危険を何度も感じつつ雄大な景色の中を飛ぶ

雄大な景色の中で空を飛んでいるを実現できる説得欲のある絵作りが必要
スペック高いPCを使ってリッチな映像を作りたかった
HAPPY FORESTを観てマーザにコンタクトを取った
すると実際にゲームコンテンツ制作実績のある会社が必要ということでヒストリアにゲーム実装をお願いすることに

第二章
『ワークフローとレベルデザイン

ヒストリア我妻さん TA兼ゲームデザイナー
レベルデザイン、ゲーム部分のディレクション、エフェクト等
11月末PJスタート>5月末にデバッグ開始>7月マスター、7/14グランドオープン
2月末にゲームはほぼ固まっていて3月中旬でグラフィックほぼイン
クオリティアップ・最適化にたっぷり時間を当てることができた

ソフト側の制作体制と課題
プロデュースはバンナム
グラフィックはマーザ
レベルデザインとプログラムはヒストリア
近そうで遠い業界・コミュニケーションがとりづらい

両社にまたがる問題は先延ばしにせず早めに処理
ChatWorkなどレスポンスが速いツールで情報共有
パフォーマンス調査と最適化は継続して行う
それぞれの会社文化に合わせた緩めのレギュレーション
明確な禁止事項を設定
 命名規則など統一しなかった
 作業ディレクトリは完全に分離
The UnrealWayに則った
 高速なイテレーション
 ホワイトボックス
 キットバッシング
 Fail early、fail often

ホワイトボックスについて
 グレーボックスとも呼ばれる
 シンプルなビジュアルで試行錯誤してイテレーションを速くする
 ホワイトボックスを3日程度で作成
 コントローラでPC上で操作可能
 UE4のテンプレートを使い一人でも短期間で作成できた
 背景オブジェクトの適切なスケール感
 時期のスピード感
 ランドマークなど確認
 操作系のブラッシュアップとレベルデザインを行った
 仮音も入れた 早めに入れた方が良い
 遊びの雰囲気も掴める
 何度もレビュー・改善を行った 半分ほどのレベルデザインがほぼ完了
スケジュール等の都合で
6つのエリアをレベルに分けて時間差で作業
 レベルデザイン完了>グラフィック置き換えを行っていった
 親レベル 子のロード・アンロードを制御
  グラフィック用レベル マーザスタッフ以外の作業は原則禁止、ランとビルドを行う
  レベルデザイン用レベル ヒストリアスタッフ以外の作業は原則禁止 ライトなし 全てムーバブルメッシュ

洞窟ではデカールを用いてフェイクライト
 ライトベクターを取得してポイントライト風にできる
 動的なライトよいり処理負荷が低い

ビフォア&アフター
レベルデザインの意図は維持したままハイクオリティの景観に

ホワイトボックスのメリット
・速い段階でゲームの全体像を、チーム全体で共有できる
・シンプルなオブジェクトで構成するので、変更・調整が容易
ミーテイングしながらその場で調整などもできる
・遊びを確定させてからグラフィック作業に入るので、手戻りが少ない
デメリット
・見た目が簡素なため、パッと見のできてない感が強い
グラフィックがまったく進んでないけどやばいんじゃない?
ゲームの良し悪しを判断できないよ と思われがち

Fail early、fail often
「速く沢山上手に失敗せよ」
そのアイデア、ダメもとで一回作ってみよう!

数時間~数日程度でテスト
水道橋の倒壊の事例紹介
倒壊させてみたら面白いのでは?というアイデア
破壊は物理でやるのか?どれくらい細かくやるのか?重さは?誰がやる?など課題が沢山ある
まずプリミティブの倒壊だけで効果を検証
大きいのでVRだとすごい迫力だった いけると確信
倒れる動きはプロトタイプからほとんど変わっていない
天空城への急上昇の事例紹介
 8000mを10秒で上昇させたい マッハ2
 VR酔いの懸念があった
 プレイヤーに突風を当てるボリュームを流用して突風で上昇させた
 近くに退避物が無いので急上昇感が薄く酔いも問題なかった
 雲を抜けると城が目の前に現れる
 数値よりも体感に合わせて調整した方が良い

体感に合わせた調整事例
 狭い場所を飛行しているロケーション
 広い場所を飛行しているロケーション
 同じ速度に見えるが後者は1.5倍のスピード
 速度の感覚は相対的なものなので
一本板から落ちるアイデア
 断崖絶壁から一本の板は不自然では?冷めるのでは?という懸念があった
 板の揺れと筐体の揺れを連動
 めちゃくちゃ怖い!圧倒的な実在感!設定の違和感なんて気にする余裕がない

VRはやってみないと分からないことが多い
何でもとりあえず作ってみようではなくスケジュールも作業量も天秤にかけて適切に判断

Unreal Wayの感想
作業手戻りが少ない
イデアを高速で形にすることで全く新しい体験やゲームデザインを生み出すことができる(かも)
チーム全体にワークフローの特性を理解してもらう必要がある
レベルデザイナーがある程度BPを使える必要がある

第三章
『グラフィックについて』
マーザ八木さん ディレクション
マーザ花田さん シニアデザイナー
2015年 HAPPY FOREST

1.技術検証
 VR制作にあたりリサーチ
 最近のトレンドをリサーチ
 ヒストリア<>マーザのUEサポート用窓口の設置 ChatWork
 ディファードとフォワードは何か?を調べた
 ラーニングコンテンツShowDownを使ってテスト
 ディファード前提なのでフォワード版を作って比較した
  ディファード GBuffer使える ライト沢山置ける 処理負荷が高い
  MSAA使えない スクリーンスペース色々使える
 フォワードを採用した
 HLOD
  調べた オブジェクトとマテリアルをまとめてドローコールを少なくする
  設定と運用コストを減らすため使用を見送り
 マテリアル
  必要な種類の数をリストアップ
  Snow、ビルボード、草の揺らぎ、ランドスケープ
  マスターマテリアルとインスタンスを使って軽量を意識
 LandScape機能を使用
  ランドスケープマウンテンを分析
  Landscapeマテリアルを検証
   Forwardでのブレンド数制限があった
   SamplerSourceをSharedWrapに変えて対応
 LOD
  大量にオブジェクトを置くのでLODは必須
  最終的にUE4の自動LOD作成機能でLODを作成
 植物を大量に生やしたい
  Foliedge機能を使用
  SpeedTreeでベースを作成 ライトベイクとLODとの相性が悪い
  MayaでのLODを使わずUE4でLOD作成することで回避
 洞窟はコンセプトデータで検証後、本制作へ
 植物の透過
  背面のみEmissiveが効くようマテリアルを編集
 分かりやすいフォルダ構成
  ちゃんと分類 ルールを守る 日頃から整理整頓するくせをつける

2.アート
 リアリティ重視の方向性
 ゲームデザインと同時進行
  決まったことをその都度アートに反映 技術的に可能化も精査

 飛行機のデザイン
 筐体の寸法を基準にデザイン
 安全性に問題ありそうな人力飛行機 レトロなデザイン
 ハンドルの位置が筐体とぴったり合うようデザイン
 翼と車輪が同期するデザイン
 背景
  全体のスケールの把握のためラフスケッチやラフモデルを制作
  6つのエリアに分けた
  プレイヤーの目線を想定してアートを制作

3.アセット
 グレーボックスの制作中は汎用的なアセットを量産
  ステージ構成決定後はボックスをハイモデルに置き換えていった
 Landscapeで地面を作成
  DCCで上からレンダリングしたハイトマップでランドスケープを作成
  スクリプトでコンバート
 木の描画負荷とちらつきが問題になった
  木の数を減らして部分的に不透明を混ぜた
  Alpha to Caverageを実装
 水面
  流れと深さと反射の3要素に絞ったマテリアル
  ノーマルマップでごまかす
  滝は垂直面が滝になるようなマテリアル
 配置の自由度を出すためにワールド座標のUVを利用
  スケールや位置に依存しない
 アセット
  広大な環境のスケール感に注意した
  山専用で設定したマテリアル 細かいモデルを追加配置していった
 プレイヤー視点でのブラッシュアップ
  多くのプレイヤーが通る場所を重点的にブラッシュアップした

4.ライティング
 晴天で昼という設定 シンプルに太陽光+環境光(Sky)
  2~4時間のビルド
 洞窟エリアはポスプロでGI強度を上げた

5.最終調整
 動物や蝙蝠を出したり空気感を出したり
 ポリゴン数削減
 テクスチャサイズ削減
 マテリアル最適化
 LOD遷移距離最適化
 ゲーム演出や何度調整への対応
 頂点アニメーションによる賑やかし要素の追加
 ・・・

グラフィックまとめ
①多くの部分で映像制作と同様の手法で制作
 普段と変わらない感覚で作業できた
②軽量化を念頭にしたシンプルな構成を心がけた
③情報共有は重要
 作業分担もとてもスムーズだった
 最適化やクオリティアップに時間を十分にかけられた

最後のまとめ
「VR ZONE SHINJUKUへせひ!!」