ゲームエフェクトデザイナーのブログ | A Real-Time VFX Artist's Blog

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CEDEC2019 UIラウンドテーブル感想

CEDEC2019で「ゲームUIラウンドテーブル2019」に参加した際の感想です。

ラウンドテーブルは過去に岩出さんが開催されていたVFXラウンドテーブルの他にもいくつか参加したことがありますが、年々参加者が増えて立ち見でも入り切らないという印象を受けていましたが、UIラウンドテーブルは立ち見前提でしょうか、椅子は少な目で立ち見スペースを大きく確保された感じで全員入れていたように思います。

大胆で思い切ったレイアウトでしたがアリだと思いました。

ちなみにCEDECはカンファレンスという性質上、どうしてもエンジニアリングのセッションが多くビジュアルアーツが少ないのだと思いますが、この時間帯はUIラウンドテーブルが唯一のVAセッションで、UI関係無くほとんどのアーティストの参加者が集まっていたかも知れませんね。

しかし「他社さんはどんな感じなのか?」というのは誰もが知りたいことでもあり、純粋にラウンドテーブルはみんなが興味あるセッションだとも思います。

そして今回のUIセッションはパネルディスカッション要素がほぼ無く、パネリストの自己紹介は冒頭に手短に終わり、その後の大半が参加者による発言で進行していくというラウンドテーブルらしい形になっていました(全て手元でメモっていたのですが、参加者からは約21人の発言がありました!)

ディスカッションは人数が多いほど発言が起こりにくい性質があるためCEDECでは進行が難しいようにも思うのですが(部屋を2つに分けたりグループを4つに分けたりと分割する手はありますが、各グループで出た意見の全体共有の時間が必要)、ディスカッション面でとても好ましい回になっていたと思いました。

今回のテーマ


時間内で取り挙げられた議題は下記の3点です。

・デザインのワークフロー

・今後チャレンジしたい表現

・採用と育成

それぞれ少しだけ感想を。

■デザインのワークフロー

プランナー・アーティスト・プログラマの誰がどの範囲までプロトタイピング・デザイン・レイアウト・演出の確認・実装を分担しているかという話がメインでした。

プランナーがAdobe XDでプロトするという事例も挙がっていました。

各社で分担が違うというのはよくある話として、職務範囲が曖昧なラインになってきているというのはモバイルだけでなく分業が進んだ大規模開発でも同様に感じることがあります。特にゲームエンジンの機能拡充によってロジックやシェーダなどもプランナーやアーティストが行えたりしますし。

■今後チャレンジしたい表現

こちらは3D空間上での表現を課題として挙げる方が多い印象でした。

UIについてはとても疎いですが、そんな自分でも話題になっていた印象があるのは2008年にリリースされた「Dead Space」です。

11年前の作品ではありますが、3rdパーソン視点のSFサバイバルホラーで、主人公が着用しているスーツの脊髄部分のランプがHPを示していたり、3D空間上にUIが表示されてゴールをそのまま示したり(今では目的地をビジュアライズするのは当たり前ですが、当時は斬新だった印象です)と、周囲でもとても感心の声が上がっていました。

海外のゲームではインゲームであってもUIをなるべく画面に表示しないというのがセオリーである印象がありますが、非常に秀逸なアイデアだなと。

そういう意味では、PS4の「Spaider-Man」の最初のゲームプレイ動画(E3 2017)を観た時に、敵が攻撃する予兆が敵キャラクターがグラデーションで赤く塗りつぶされることで表現されていて「おおっ!」と思いました。

ただ、プレイしていないので動画を観ての認識ではあるのですが、製品ではこの表現は無くなったんですね。簡単になり過ぎるからなのか、没入感の素疎外からなのか。。

こういった、キャラクターや背景なども含めたゲーム情報のビジュアライズは色んな可能性があるのではと思ったりしました。例えば「The Division」のこの動画を初めて見た時は強いインパクトがありました。ARがテーマでしょうか、男性の腕にGUIが表示され、床に立体的なマップが広がり、地図から情報を読み取って周辺情報をアップデートして周囲にGUIを重ねて新たに情報を表示したり。

こういった表現はUIセクション内では完結しない性質上、ディレクターやアートディレクターや他セクションとの連携が必須でしょうから、実現できていると1つレベルが上の組織なのかも知れないですね。。

■採用と育成

先生側から「学生のどういう部分を評価するか?」という質問があり、それに対して「既存の好きなゲームのUIを模写する課題を与えて判断している」という回答があり、興味深く思いました。模写は「観察すること」と「再現すること」を強く意識する作業なので育成にも非常に有効ですよね。

あと育成で挙がった例で「1週間に1回、世の中に溢れているイケてないデザインのものを必ず1個見つけてきてもらう」というものがあり「なぜ良くないのか、どうしたら良くなるのか考えてもらう」ということでした。非常に面白い試みですね!

総評


1時間が短い‥!
会場が温まってきたぞ!というところで終わった印象です。

ラウンドテーブルは最初はどうしても様子見みたいになりがちとも思いますし、本当は2コマとかやったりするとさらに深堀りできるのでしょうね。。

ただ、セッション最後にUI懇親会について周知されていて、そちらが本番!という感じの流れになっていたのなら十分に役目を果たしているのかも‥とも思いました。

それから、事前にネット上で課題の投稿が可能であった点もとても良い試みに思いました。今回課題が多く寄せられたのではと思うので、次回は各テーマに対して「あなたの職場はどう対処していますか?」を集約するとより深堀りされていきやすいでしょうか‥?