ゲームエフェクトデザイナーのブログ | A Real-Time VFX Artist's Blog

About Making Materials on UE, Making Tools with C#, etc

「膨大なタスクの捌き方」講演メモ

こちらに参加してきました!その際のメモです。

「膨大なタスクの捌き方」

株式会社スクウェア・エニックス
プログラマ 菊池さん

一昨年認定スクラムマスターを取得 アジャイルを勉強中
キングダムハーツシリーズを10年以上やっている

アンケート
 プロ・セミプロ 8割
 PG 多い
 企画 そこそこ
 アーティスト かなり少ない

■スケジュールやマネージメント

得意ですか?
たいがい苦手と答えますよね
特にプログラマはロジック考えるのになぜスケジュールが考えられないのかな?と思ったりする

■ゲームの制作手順

見積もり
計画
実行(作成)

■見積もりについて

制作規模の把握
 結局はそれだけ 細かくやる必要はないですよという話
 プレイヤープログラム関連
 情報収集から入る
 アクションリストがある 企画さんが用意する今回どんな技があるというリスト
  カテゴリ別など

 作業数の洗い出しを行っていく
  必要なプログラムシステムを検討
  各カテゴリの最大個数を設定
  未定のものも枠として確保しておく
  企画が固まっていき次第埋めていく

 コストを見積もる
  大中小の3つに分ける
  大 1ヵ月 工数は1.00
  中 1週間 工数は0.25
  小 1日 工数は0.05

 リストを再構築
  通常アクション・フリーラン・攻撃など大きなくくり

 進捗表としても流用可能
  大の作業が21個あると21ヵ月かかるということになる
  残りの数を出すと進捗表にもなる

 注意点
  必要以上に正確性を求めない
  見積もりに時間をかけても仕方がない
  がちがちに決めると融通が利かなくなる
  プリプロ実績からコスト算出が理想
   プリプロをやる段階でこれを作るのにこれくらいかかったというのはちゃんと出しておく

 不確実性コーン
  マスター締め日に近づくにつれズレは収束されていく
  初期の段階の予想に16倍の誤差が出る
  見積もり無しで仕事しようって言い出す人も
  一年先の天気予報は絶対に予想できないですよね
  見積もりはほぼほぼ

 制作規模の把握ができればOK

■計画について

 今まで‥
  ガントチャートを引いて計画 みんな大好き

 ガントチャート
  何から引いていく?コツは
  上流工程の状況が分からないからムリ
  気にせず好きなように引くと良いと思う 大体そうしていた
  他のセクションもそれに合わせて調整してくれていた

 ムリな予定になる
  締め切りに合わせて引くのですし詰め状態になる
  ほぼ間違いなく予定通りにならない
  割り込み作業 仕様変更 準備不足
  線を引いてやった気になる

 今回
  上からの要望
  PV関連セクションをまたいで計画してね
   ガントチャートなんて無理!
  基本単位となるワークフローを設定するところから始めた

 ワークフローをグラフ化してイメージしやすくした
 4つのフェーズに分けた
 1準備
  HDの開発は準備にものすごく時間がかかる
  企画概要作成
  アート・キャラ作成 携帯機だと1ヵ月だったのが半年になる
   ここはちゃんと把握しておこう
  ゲーム及び技術検証をその間に済ませておく
  方向性の確認
  マイルストーンの設定

 2作成
  企画仕様の作成
   キャラが出来上がる直前までにやっておきましょう
  モーション、エフェクト、UI作成
  フェイシャル、カメラ、プログラム作成
   これらを順次開始していく
   仮作成
  レビューして修正事項検討

 3修正
  企画仕様FIXを行う
  モーション、エフェクト 修正・追加作成
  UI、カメラ、プログラム 修正・追加作成
  レビュー&成果物FIX承認
   これが通らないと延々と繰り返すことになる
 
4調整
 バランス調整
  モーション、エフェクト、フェイシャル仕上げ
  大体こういったイメージ
 最終確認

 プログラムは大体最初から最後まで関わる
 重要なポイントは2と3 コアな期間 一番注目してスケジューリングに回そう

 マイルストーンの設定をする
 関連性のある成果物をグループ化
  プレイヤー作業での分類
   武器別
   大技別
   追加操作キャラ別
   それぞれごとにマイルストーンを設定する

 1週間単位のグラフに落とし込む

 作業見積もりの可視化
  二ヵ月くらいかかるとかがパっと見で分かる

 フェーズを当てはめる
  プログラム以外の各パートもグラフに落とし込む

 タイムラインに乗せていく
  基本は重複させないで割り当てていく
  担当者を割り振れる場合のみ重複可
  パズルのように当てはめていく 楽しくなってくる
  キャラ班がスケジュールをきっちり決めているので割とやりやすかった

 簡単でしょう?

■実行について

 今まで‥
  頑張って作る!
   それはそうなのだけど‥
  計画通りに作れない
   なぜ遅れるのか?
    割り込み作業が発生する
    割り込み会議
    不具合の発生
    仕様不足
    ‥
    ‥
   なぜ割り込みが発生?
    ちゃんと計画していない 計画が伝わっていない 思いつき 一時の感情で判断 神の啓示‥
   結局はコミュニケーションが問題かも?

 なので今回、働き方を変えました

■働き方について

 作業時間と成果物の関係
  今まで‥
   働く時間が右肩上がりになっていく
   成果物がある一時を境に増えなくなっていく
   成果物量を頭打ち
   さらに働く時間が増えてしまう‥
  作業時間を増やすと
   短期的には瞬発力の向上
   長続きしない
   副作用で生産性が低下 寝不足になったり
   作業時間増加スパイラル そういった反省がある

  今回は‥
   働く時間を変えない 一定の時間で働く
   成果物を常に同じ量出し続ける
   繰り返しによる効率上昇 成果物は少しずつ上がっていく

 働き方変えます!

 コンセプト
  計画的に作る
   ムリ・ムダ・ムラを無くす
  価値の共有
   コミュニケーション
   進行状況を明確にする
   品質レベルの共有をみんなでしていこう

 スプリント開発を行った

■スプリント開発について

 スプリント開発とは‥
  アジャイル的な開発をしている人は? ⇒ ちらほらと手が上がる

 1週間単位のサイクル
  初日にスプリントプランニング
  最終日に作ったものをレビュー
  毎週同じ時間、同じ場所、同じリズムで繰り返す(ダイエットと同じ)

 初日に計画 ずっと作っていって 最後にレビューをする
  これを毎週繰り返す

 バックログ
  要件定義のリスト
   価値の高いものから作っていきましょう
    ユーザーにとって価値の高いもの 僕らではなく
   今回は前述のマイルストーンを母体にしました
   リストを優先度を高~低の順位で並べる
  利点
   緊急な案件も一旦バックログに積むことで開発のリズムを崩さない
    どっちの優先が高い?かと話し合ってからタスクに積む
   作るもの作ったものが確認できる
   計画の精度を上げながら開発できる

 スプリントプランニング
  1週間の作業を計画
   バックログの内容を確認
   タスクの落とし込み
   見積もりを立てる
  見積もり
   1日5時間x5営業日=週25時間分を1週間分のマイルストーンとして組み込む
   1日8時間働くとして、実作業は5時間ほどが現実
    あとはお昼ご飯や会議や準備だったりするので
   2週間分、見積もる
    翌週分はざっくり曖昧でもOK
    少し先を見通すことで準備が容易になる

 リストに対して予定時間を書いていく 時間単位で
  経験した時間を書いていくので開発後半ほど精度が上がっていく
  上から25時間分を選択
  チームのみんなに同意を得てやっていく

 利点
  レビューで何が見れるのかを全員で共有できる
  何を目指すのかを明確にしてから作業に入れる
  実現の仕方について話し合える

  ここにすごく時間がかかると聞くが 10~15分で終わる感じでやっていた

 スプリントレビュー
  みんなで確認
  成果物に対する改善の場
   暴露具の要件が満たせたか
   価値が確認できるか
   改善するものはバックログに追加

  利点
   定期的に確認するので品質が安定
   プロダクトの仕様を全員が把握できる
   プロダクトへの意識が高くなる
   動いているものが見れるのでレビュー会は楽しい!

  補足(人と場所について)
   最初はプログラマの共有ブースで10人くらいでやっていた
   その後はオープンな場所でやるようにした
    担当外の型にも何やっているか分かるように透明化を図った
    無駄な不安を払拭した
   お昼ご飯を食べるスペース 50インチくらいの液晶モニタとプロジェクタスクリーン2台

  チェック者の人がちゃんと一緒に参加して見てくれていた

  ビデオに撮って社内のWeb上で動画配信可能なページでみんなが見れるようにした

 最終的に何が起こったか
  レビューでバグるとすぐ直すので
  QAでの件数が減った
  いい加減な作業をするとレビューで散々な結果になるので緊張感を持てた
  進捗が安定した
  メンバー間の信頼関係が強化された
  楽しい開発ができた
  開発が間に合った!

 GCC2019で登壇して、そちらでは動くものを用意する予定

■Q&A

Q:
スプリントレビューについて
モデルやPGが1週間で成果が出せないものはどうした?

A:
マイルストーンの話
1週間のスプリントとは別に1か月のマイルストーンをデザイナー向けに用意した
必要なものを全てプールしておく
できたものから1週間のスプリントの中に入れていく
今週これが取り掛かれるので

Q:
進捗自体は確認しない?

A:
1ヵ月に1回モーションとエフェクトと一緒に話し合ってやっていった


Q:
バックログを登録するツールは?

A:
バックログ」というツール ※Webベースの有料サービス
初心者にも扱いやすい感じで良かった

Q:
スプリントの頻度について

A:
最後の1~2ヵ月は1Dayスプリントでやっていた
レビュー会は1週間に1回
1日でやるのは直結している上司と夕方にやった