ゲームエフェクトデザイナーのブログ | A Real-Time VFX Artist's Blog

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ソウルシリーズとBloodborneについて思ったことなど

フロムソフトウェアが手掛けるタイトルをプレイするのは実はデモンズソウルが初めてだったのですが、チュートリアルの時点ですっかり世界観に惹き込まれ、難易度がカンストするまで周回したり、魔法キャラや技量キャラなど何体もキャラデータを作ってはそれぞれのスタイルでのプレイを楽しみ、やがてはレベルを縛るといったやり込みをするほどに熱中しました。
ソウルロストや非同期系のシステムなど新しくて秀逸なゲーム要素が盛り沢山ではあるのですが、モンスター・装備・魔法・隠し通路といったあたりの世界観から来るのでしょうね、Wizardryを彷彿とさせる懐かしさを感じて胸に突き刺さるものがありました。胡散臭いNPC達はWiz 5のNPCを彷彿とさせたりで。

そんなデモンズソウルの後にはダークソウル1・2ともに発売日からどっぷり浸かり、DLCも含めて何周プレイしたか分かりません。そしてやはりレベルや武器を縛ったりノーデスにチャレンジしたりといった感じで隅々まで遊び尽くしました。これだけプレイ時間を費やしたゲームはここ5~6年では他にありません。

ただ対人戦には興味が無いのでもっぱらソロか協力プレイを楽しむ感じです。

 

さて、同じ開発サイドとしてこのソウルシリーズで作品から少し離れた部分で印象に残っているのは、タイトルごとに国内外でパブリッシャーが違っていたりする点、また発売直後はサーバー接続問題やアイテム無限増殖が毎度起こってしまっている点、リスポーン地点周辺で死んでもロードが長い点など、色々と苦労や事情が垣間見えて想像をあれこれ膨らませてしまいます。

このあたりについては余計なお世話な話でもあると思うのでさておいて、シリーズにおいて強く突き刺さった要素を3つ挙げてみます。

 

まずは何と言っても濃密な世界観と、それを魅力的に見せる構成力・演出の巧みさ。シリーズ毎度、発売前にはスクリーンショットやトレーラーが出る度に強く心をときめかせられます。

 

2つめはコンスタントなリリースと、リリースごとに着実にグラフィックのクオリティが向上していっている点。

デモンズやダークソウル1でのスペキュラがやたら強くてバタ臭い感じも生々しさを醸し出していて好きですが、ダークソウル2のマットに抑えられた情景も良かったです(好みで言えば発表当初のスクリーンショットのようなポスプロでコントラストが高く暗めに調整した路線で進めて欲しかったですが、プレイし易さを優先させて製品の形になったとAutodeskのウェビナーで語られていたように思います)。

そして最新作であるBloodborneにおいては、PS4のAAAタイトルとして相応しく緻密で隙の感じないビジュアルクオリティに加え、ソウルシリーズとはまた違ったクトゥルフ的な濃厚な世界観にはううーん‥やはりすごい!と唸らされます。日本の強みを活かしてセルルックで‥という路線ではなく、海外AAAタイトルと真っ向勝負で引けをとっていない印象で、ここまで開発力のあるディベロッパーは国内には片手で数えられるほどしか見当たらないのでは。
これは同じ国内の開発者として誇らしくもあり、強くリスペクトを抱かずにはいられません。

 

そして3つめは、初代デモンズソウルのリリース時にパブリッシャーであるSCEが広告を一切打たなかったという点です。それでも「今の時代に逆行する死にゲー」「ソウルロストという強烈なシステム」「それでいてとても良作」ということで話題性から口コミで売り上げを伸ばし、国内外のレビューサイト(mk2とかMetacriticとか)で非常に高いユーザースコアを叩き出したことです。私自身、知り合いやネットでのレビュー記事から興味を持ち購入に至りました。
この点については何となくですが「このタイプのゲームが好きな人に向けて作り、そしてまさに狙い通りの層が購入して大好評の結果となった」という理想的なケースだったのではないかと想像します。

ですがデモンズソウルが評判が良かったことがそのまま数字に出たのか、ダークソウルでは初動でデモンズソウルの2倍ほどの売り上げ本数(国内)となっていたかと思いますが、海外では評価は高いものの国内では賛否両論という反響になっていました。
「否」の意見が増えた理由としては発売直後にサーバー接続周りのトラブルにてオンラインで楽しめない状態が続いて出足に躓いたことや、スタート地点からどこへ行けばいいか分かりにくいレベルデザインになっている点(しかも難易度の高い複数のエリアに隣接している)、またオンラインでの他のプレイヤーが書き残したヒントを前提としたためか全体的に迷いやすいレベルデザインになっている点(特にアノールロンドの細い屋根に飛び降りて進む経路はオフラインだと気付かずに詰まってしまう感じになっており、メインルートとしてはさすがにちょっとどうかと思いました)、かなり序盤のボスであるガーゴイルの難度が高くて入門者の心を折った点など色々とあるかと思います。

このあたりは特にデモンズソウルを遊んでおらず、デモンズの評判からプレイしたケースが多かったんじゃないかと想像しました。つまり前作の評判が良かったために本来のターゲットから若干外れる人の手にまで届いてしまったのかなと。そうだとしたら、これはこれで興味深いことでもあります。

 

他にもこのシリーズには素晴らしい点が色々とあります。

デモンズソウルを初めて遊んだ時には、オンラインを利用した、しかも非同期で成り立つ複数のシステムが秀逸である点に率直に「これは面白い」と思いました。
ディレクターである宮崎さんのCEDECでのご講演では、最初の企画草案の段階で主な仕様が一通り入っており、そのままブレずに最後までいったというようなお話がありました。うーん、すごい。。
また、死んでもユーザーが納得がいくような調整(操作に対してキャラクターの挙動をレスポンス良くするなど)にしているという点も、とても素敵なことだと思います。

とは言え、デモンズソウルではプレイしょっぱなから「心を折る気まんまんだろう」と言いたいゲームデザインには尖ったものを感じずにいられません。
スタートするとまずは最初のエリアをクリアするまでレベルアップできないようになっていて、しかもボスまでかなり長い道のりです。嫌らしいトラップや強敵の配置が連続しており初見殺しが満載です。しかもデモンズソウルでは一度死ぬと条件を満たすまでHPが半分になるという恐ろしくえげつない仕様‥!

しかしそこを乗り越えると非常に濃厚な体験が引き続き待っている訳です。

 

他には、基本的に拠点エリアとボス戦以外ではBGMを流さずに風や燃える火といった環境音のみでシーンを奏でている点がユニークで、これが味気なく感じるどころか逆に臨場感を大きく高めていて非常に効果的に思いました。
その分、ボス戦のBGMが豊富に用意されているのも面白い。シリーズ通してボス戦には歌や合唱が多用されていて、強く印象に残ります。

 

あとは、デモンズソウルではゲームのモードとしては対人戦が用意されてはおらず、侵入という要素からユーザーによる1vs1の決闘という文化が生まれリリース後も長く楽しまれ続けている状況について、開発側は元々想定したものではなかったのではと想像するのですが、対人向けにバックスタブや魔法周りで様々なテクニックがユーザーによって開発されるほどに熱狂的にプレイされ続けていて一部の層で極まった状態になっており、それが成立する形になっている点がまたすごいなと思いました。
これはデモンズ以降は対人も考慮してのバランス調整の必要性が大きく上がり、バランス調整面でのジレンマとして重く圧し掛かっているのではと思ったりしました。例えばダークソウルでは防具にスーパーアーマー効果を付与する「強靭」というパラメータが登場し、ソロプレイでは非常に良いシステムだと感じたのですが、対人面では強靭がバランスを悪くさせていると批判を受けていたりもします。

 

それから、シリーズを続けていく際の仕様変更の難しさをダークソウル2では感じました。ディレクター交代とともにそれまでのシステムを大まかには踏襲しつつも様々な試みを盛り込んでいる印象でした。ただ、それはシリーズが持つ尖り具合(=良さ)を薄れさせてしまう要素にもなっており、自分の中でもシステム面で変更のあった要素1つ1つに賛否双方の面を感じました。
例えば篝火の配置の多さと最初から自由に転送できる仕様変更は、大量にソウルを得ている状態で進むべきか戻るべきかという緊張感を薄れさせますし、パラメータ振り直しアイテムはキャラクターデータを新しく作成する意味合いを薄れさせ、エリアごとに周回レベルを上げることが可能なアイテムは周回プレイを楽しませる意味を薄れさせることにも繋がっていると思います。ただ、これらはどれも利便性が上がりストレスが下がる要素でもありました。
世界観の点でも、ベルセルクの「触」を彷彿とさせるような生理的に受け付けない人もいるであろう気持ち悪いステージがダークソウル2から無くなり(デモンズの腐れ谷やダクソの病み村)、情緒溢れる景観が続きつつも正統派なファンタジー路線に若干の物足りなさを感じました。作品を追うごとに恐怖を煽るようなホラー要素も薄れているようにも思います(デモンズの塔のラトリアやダクソの小ロンド遺跡・公爵の書庫のような)。

とは言え、そんなダークソウル2も私の場合、なんだかんだでノーデスプレイするほどに熱中して楽しませて頂いた訳です(ノーデスプレイ自体はトロフィーコンプに必要だったからですが)。

ただ、コンソール向けの大きなタイトルを任せられるようなディレクターを育てるというのは昨今かなり難しいのではと思うのですが、すでに成功しているシリーズを任せるというのは一番堅実な方法でもあり、しかしコアファンがついている場合には反応も怖いところだとも思います。ダークソウル2はそんなあたりのことを色々と考えさせられました。

 

さて、前置きがすっかり長くなってしまったのですが、最新作であるBloodborneも当然ながら隅々まで探索し、隠し要素もひとしきり楽しませていただきました。
さすがに「グラフィック等を流用できない完全新作」であり「PS4にハードが移り表現力が大幅に増した」ためか、グラフィックの品質の高さには唸らされつつも武器種や遠距離攻撃の面からプレイスタイルの幅の面で物足り無さがあり、キャラクターを作り直して何度も遊ぶというところにまでは至っていません。
ですが、同業者としては大変高いビジュアルクオリティにクトゥルフ的な濃い世界観、そして気持ち良いアクション‥と三拍子揃った内容をほど良いプレイボリューム(クリアまでの)にまとめられていて、素晴らしいなと思わずにはいられません。
これはSCEパブリッシャーで企画当初からPS4向けだったという点も大きいのでしょうか。システム面でシリーズを踏襲していることを踏まえても、現状、国内で最も開発力があると言えるのではないかと思いました。
ビジュアルに関しては、背景とエフェクトを隅々まで観察するために2週目もあちこち録画しながら最後までプレイしました。スペキュラなどフェイクでの表現が非常に巧みだったり、セルフシャドウやキャストシャドウを最低限に抑えている様子が伺えたりと色々な面でとても参考になります。

世界観に関しても、狂気とホラーが入り混じった雰囲気が漂う世界、そして新しいシステムがゲーム中にほとんど説明されずやや突き放した中で「なんだろうこれは?」とワクワクさせる感じが、シリーズ初代のデモンズソウルを初めてプレイした時が蘇るような、そんな印象がありました。鐘を鳴らす女の鐘の音はタコの看守を思い出してデモンズ好きには嬉しい。

そしてプレイした中で、本作ではこれまでのシリーズから一段と「ゲームをより気持ち良く遊ばせる」ことに重きを置いた調整になっているように感じました。

まず、武器を振ってもスタミナ消費は少なく、また回復も速い。
重量というデメリットが撤去されており、なのでローリングも最初から快適です。
武器は攻撃モーションは過去シリーズで言うところの「優秀なもの」が揃っており、スキも少なく、背景を殴っても弾き返される場面がかなり限られています。
銃は出が速く、威力は弱めなもののパリィはこれまでのシリーズと比べて格段に行い易くなっています。

このあたりは、対人戦を踏まえているとしても「気持ち良さ」に思い切って舵取りしたものだなあ‥などと思いました。実際のところどういうコンセプトで調整したのか宮崎さんに伺ってみたいです。

また、主要アイテムである回復アイテムと銃弾は所持数制限を超えたら自動的に倉庫へ転送され、拠点に戻ると自動的に補充されます。しかもこれらアイテムは道中で頻繁に出現するので、特にゲーム中盤まではほぼ倉庫へ転送されて倉庫もMAXになる勢いでした。
落下ダメージも過去作と比べると驚くほど少なくなっており、かなり高い場所から落ちても平気です。
ハシゴを急いで登ってもスタミナを消費せず、松明も無制限で使用可能。
エレベーターは起動も速ければ昇降速度も速く、レスポンスが良いためイライラしません。

何よりも敵からのダメージがかなり抑えられていると感じました。
過去シリーズでは掴み攻撃を受けたら=死という印象でしたが、特に序盤のボス「聖職者の獣」では掴み攻撃や強烈な見た目の攻撃を受けてもこちらの体力的に全然平気なため、所感としては「随分優しくなったなあ」などと思いました。ただ、ごり押しプレイを防ぐためなのでしょうか、ボスの体力がやたら高く設定されていて「これはパッチで低くなるだろう」なんて思いましたが、そうでもなかったですね。。
パリィが有効なボスも多いので、体力がやたら高いと思ったのも振り返れば聖職者の獣くらいだったかも知れません。

それから、オフラインで遊んでもあまり迷わない程度にマップが親切に設計されているように思いました。
過去シリーズ作で思ったのは、オンラインのシステムが売りであることからもどちらかと言うとオンライン前提の設計になっているのではないかという点で。
つまりオンラインプレイではゲームのヒントがそこら中に表示されるので、ルートやアイテムを分かりにくくしないとシステムが活かされない面があるでしょうし、さらには強力な助っ人を2人も呼べたりする訳です。勿論それが高難易度への救済にもなっているのですが、反面、うろうろしているだけでボス戦が終わってしまった‥みたいなこともありますし、そのためにどうしても初見はオフラインでプレイせざるを得ない強迫観念的なものも感じていて、しかし協力プレイは大変楽しいし‥と、色々とジレンマを感じてしまいます。
ここで見事なゲームバランスを両立させるのって難しそうですが、どうなんでしょう。

ちなみに全くの余談ですが、エフェクトにスクエニライクな印象を受ける場面がちょこちょこありました。アメンドーズのレーザーの爆発とか、ワープとか、衝撃波とか。本作のエフェクトは非常に表現が洗練されていて見入ってしまいます。特に雷の表現が非常に好みで、武器が帯びる雷や触媒で放出する雷も格好良いですし、ボスの黒獣パールがまた渋い。。

 

そんなこんなで、Bloodborneが発売されて結構経つので「なぜ今頃?」という感じではありますが、ふと思い立ったので気の向くままでつらつらと書きました。

おしまい。